シンガポールでは行政サービスに使う個人ID「Singpass」を使った取り組みが2003年から進められています。本記事では、本サービスの発展経緯についてまとめます。
注:主にこちらのニュースサイトを和訳する形でまとめています。
目次
Singpassの概要
Singpassとは何か?
Singpassは、シンガポールの行政サービスに用いる電子IDで、700以上の行政サービスへのアクセスや個人認証に使われています。主に年金関連手続き、保険契約の電子サイン、パスポートの更新通知、ワクチン接種証明書の発行などにも使われています。
現在の利用状況
利用者は約450万人で、15歳以上の市民と永住権保持者の97%を占めています。
詳細・導入背景
もともとは行政サービスへのSSO機能提供を目的として開始され、運転免許証のデジタル化などに寄与してきました。コロナ流行時に、開発元である政府技術局のチームが感染症関連の機能をSingpassのアプリに迅速に構築しました。その結果、接触者の追跡やワクチン接種のデジタル証明書、渡航時の検査結果などがデジタル化され、利用者が急増しました。
民間企業でもAPIが多く使われています。たとえば、金融機関では、顧客の許可を得たうえでMyinfoといわれるAPIを使ってユーザ情報を取得しています。これにより、口座開設申請簡易化による申請工数が最大80%短縮、顧客獲得工数の削減を実現しました。
技術基盤
政府は2023年までに政府システムの7割を商用クラウドに移行する目標を掲げていますが、Singpassは現在ほぼ完全にクラウド上にあります。
また、シンガポール政府は英国政府と2019年に締結した覚書に基づき、デジタルIDの相互承認に向けた取り組みを進めています。
市民からの信頼の獲得
サービスが広く普及したのは、数十年にわたって築かれたシンガポールの高い信頼社会の賜物です。
サービスの導入時、市民からプライバシー侵害に関する強い議論はありませんでした。しかし政府は市民からの信頼を当然と捉えず、デジタルトラスト構築に向け、サービスが透明性、安全性、プライバシー、セキュリティ、信頼性、データ倫理を充足するために尽力してきました。とくにセキュリティは最優先事項であり、セキュリティ要件を満たすための厳格な基準を設けるとともに、市民からの信頼を維持するためにさまざまなテストを実施しています。
記事は上記までの内容で終えていますが、ほかにも開発の裏側について、NDIのブログで解説されています。