海外デジタル政策ログ

海外のデジタル政策を気まぐれに観察するブログです。元「丸の内OLの気まぐれGovTech日記」です。

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【英国】AI企業が遵守すべき5つの原則をまとめたAI白書を議会に提出

英国の科学・イノベーション・技術省とOfficeforAIが、AI白書を議会に提出したようですね。

英国のAI産業は非常に盛んで、AI企業は欧州他国の2倍も存在すると共に、毎年何百もの新興企業が出てくる等、英国に大きな経済効果をもたらしています。一方で、AIが急速に発展し続ける中、人々のプライバシーや人権、安全に対して将来的にもたらす可能性のあるリスクについて疑問が投げかけられると共に、人々の生活に影響を与える決定をAIツールで行うことの公平性についても懸念されている、と政府は述べています。

さらに、現行のAI関連法がパッチワーク的であることから、規制を遵守しようとするAI企業に財政的・管理的負担を強いており、イノベーションが阻害される事態に繋がってしまっていることも現状の課題として挙げています。

イギリス政府が公開した、同国初のAI白書

そこで、政府は、AIガバナンスを単一の機関に委ねるのではなく、既存の機関(安全衛生庁、平等人権委員会、競争市場庁等)に権限を与え、各々の機関の状況に応じ適切なアプローチを検討するようにすることを提案しました。

本白書は、上記の提案及びそれを実行するための5つの原則を定めたものになります。

その原則は以下の通りです:

  • 安全性・セキュリティ・堅牢性
    • AIのアプリケーションは、リスクが慎重に管理された安全、安心、堅牢な方法で機能する必要がある
  • 透明性・説明可能性
    • AIを開発・導入する組織は、いつどのようにAIが使用されるかを伝え、AIの使用がもたらすリスクと適切に見合ったシステムの意思決定プロセスを詳細に説明できるべきである
  • 公平性
    • AIは、英国の既存の法律、例えば「Equality Act 2010」や「UK GDPR」に準拠した方法で使用されるべきであり、個人を差別したり、不公平な商業的結果を生み出してはならない
  • 説明責任・ガバナンス
    • AIの使用方法に対する適切な監視と、成果に対する明確な説明責任を確保するための対策が必要である
  • 争議可能性と是正
    • 人々は、AIが生み出す有害な結果や決定について争うための明確な手段を持つ必要がある

 

政府は、今後12カ月間、組織に対する実践的なガイダンスやリスク評価テンプレートなどのツールやリソースを発行し、各分野で上記の原則を実施する方法を定めるであるとし、規制当局がこの原則踏まえた法律の制定も検討するとしています。

 

(補足)

データ倫理・イノベーションセンター(CDEI)が、今回のAI白書の作成にあたって実施した市民へのアンケート調査結果(「定性調査報告書 AIガバナンスに対する国民の期待(透明性、公平性、説明責任)」)を別建てで公開しているようですね。具体的には、AIガバナンスに対する国民の現状認識を知ることを目的とし、色々なユースケースにおける透明性、公平性、説明責任の有無について様々なバックグラウンドの方にアンケートしたものということです。

 

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【英国】レジリエンスフレームワークを公表 データの活用を強化

英国内閣府が、レジリエンスフレームワークを公表しました。

レジリエンス 防災 サイバーセキュリティ データ利活用 安全保障

フレームワークの中では以下の5側面から政府の中長期的な目標、2025年まで・2030年までの目標をそれぞれ明記しています。

  1. リスク
  2. 責任と説明責任
  3. コミュニティ
  4. 投資
  5. スキル

分かりやすく解説されているニュース記事がありました。

(一部和訳)

内閣府は、サイバーセキュリティや戦略的計画を改善するための様々な施策と共に、データの有効活用に重点を置いた新しい「英国政府の強靭性フレームワーク」を発表しました。本フレームワークは、政府のあらゆるレベル、重要な国家インフラ事業者、民間企業、市民社会の一部、一般市民を結集し、テロ、異常気象、パンデミックなどのリスクへの備え、対応、回復をよりよく行えるようにすることを目指しています。

内閣府はこの中で、データの利用を改善したいと述べています。「国の強みと弱みをより強固に理解し情報共有することで、国家レジリエンスにおいて役割を担うすべてのグループにその権限が与えられるようにしたい」のです。

本文書では、膨大な量のデータを収集、分析、可視化する技術の可能性を強調し、国の備えの一環として、データの流れ、所有権、相互運用性についての理解を引き続き向上させる必要があるとしています。また「安全保障・防衛・開発・外交政策の統合的見直し」を受けて、危機管理のためのデータと専門知識を集約した「国家状況センター(SitCen)」が昨年、内閣府に設置されたと述べています。

 

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【英国】AIの信頼性を活用領域別に評価した報告書を公表

英国のデータ倫理・イノベーションセンター(CDEI)が、AIの信頼性担保にどれだけ取り組めているかを活用領域別に評価した報告書を公表したようですね。

AI 信頼性 評価 HR 人事 採用 自動運転 コネクテッドカー 金融

CDEIは「効果的なAI保証エコシステムへのロードマップ」(2021年12月公表)の実現を支援するため、「AI保証プログラム」を立ち上げました。初年度である本年度のプログラムでは、CDEIが最も大きな効果を発揮できるよう、業界のAI保証への関与の現状をよりよく理解することに重点を置いています。

本報告書は、上記の活動から得られた主要な知見をまとめたものだそうです。本報告書では、AI保証に取り組む上での領域の障壁と実現要因を明らかにし、AI保証技術及び標準の普及と採用を促進するための潜在的な実践的介入策を明らかにしているとのことです。

対象となる領域は、AI導入の拡大により生じるリスクの幅が広いものとして、人事・採用領域、金融領域、コネクテッドカー・自動運転領域が掲載されています。背景としては、人事・採用は差別的な偏見のリスクをもたらす可能性がありシステムの公正さが必要となること金融はサイバー攻撃や金融詐欺のリスクをもたらす可能性があり技術的なセキュリティと堅牢性が必要となること、コネクテッドカー・自動運転は人命に対するリスクをもたらす可能性があり安全性と救済のためのルートが必要となることが挙げられています。

 

AIの信頼性担保に際し生じる障壁別に各領域を評価した表が以下です。

AI 信頼性 安全性 評価 人事 採用 金融 コネクテッドカー 自動運転

3領域とも共通して、知識・スキルの不足、保証技術や技術標準の認識不足が挙げられるとのこと。

人事・採用領域は、今後特有のガイダンスを推進すること、上層部にAI信頼性担保のメリットを認識させること、規制の更なる明確化が必要であることが述べられているようです。

金融領域は、AIの信頼性担保の認知度向上のための学習機会を増やすこと、AIの信頼性を測定・評価するツールを認知させること、ベストプラクティスを取りまとめることが必要であることが述べられているようです。

コネクテッドカー・自動運転領域は、技術標準を充実させること、ガバナンスや規制の枠組みをより強固とすること(参考:自動運転車における責任あるイノベーション)、グッドプラクティスを取りまとめることが必要であることが述べられているようです。

 

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【OECD】データガバナンスポリシー策定のためのガイドを公表 他同分野の公表物2本

OECDが、データガバナンスポリシー策定のためのガイドを公表したようですね。

本書は、OECDがデータガバナンスに関して有する知見を踏まえ、政策立案者がデータガバナンス政策を策定・運用していくのを支援するもののようです。

データガバナンス 政策立案

(press一部和訳)

今日の経済を動かすデータのユビキタスな収集、使用、共有は、既存のガバナンスの枠組みや政策的アプローチに対し挑戦となるものです。

これに対し、本文書ではデータガバナンスに関して OECD で行われた広範な研究と分析、各国の政策と実践、関連するOECDの法的文書に基づき、政策立案者がデジタル時代の政策領域にわたるデータガバナンス政策を開発、改訂、実施する際にポイントとなる以下の3つの基本的政策緊張に対応できるよう支援するものです:

  • 信頼を最大化しながらデータの開放性と管理性を両立させる
  • データに関する利害や規制が重複・対立する可能性を管理する
  • データおよびその有効な再利用を奨励する

本書は、政策立案者がデータガバナンスのための効果的な政策を立案・修正する際に、考えられる政策アプローチや実際の事例に基づいて方向付けるための質問のチェックリストで構成されています。

 

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チェックリストの一部は以下の通りです。

OECD データガバナンス 政策立案

 

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同じデータガバナンス分野における公表物が2本あります。

 

1)「成長と幸福のためのデータガバナンスを推進するためのデジタル化」

これは、データがいかに人々の生活を変え経済的な優位性をもたらす戦略的資産として台頭してきたか、またデジタル時代におけるより良いデータガバナンス政策のための検討事項を概説したものです。

 

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2)進化する技術環境下でのデータ-コネクテッドカーと自動運転車の事例-

デジタルはデータの作成、生成、収集、転送、利用を支えるものであり、つまりデジタルの開発と展開がデータガバナンス政策の議論を形成しているとOECDは捉えています。これを受け、個人情報である可能性が高いデータを大量に収集するコネクテッドカーや自動運転車を例に、技術開発がデータガバナンスにどのような異なる問題を提起しうるかを分析したものが本書です。

自動運転の例を通じて進化する技術的な状況におけるデータガバナンスを探求し、政策が長期にわたる技術的な変化に対してレジリエンスを保つための提言を行うことを目的としています。

 

OECDのデータガバナンスチームの方お疲れ様でした)

 

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【EU】欧州委員会、オープンデータ成熟度レポート2022を公開

欧州委員会が、オープンデータ成熟度(ODM)レポート2022を公開しました。これはEU全体におけるオープンデータの成熟度を測定するもので、第8回の年次報告書にあたります。オープンデータの公開と再利用を推進するEU加盟国が達成した進捗状況、およびそれを可能にするために設定されたさまざまな優先事項を記録しています。

またデンマークか北欧が圧勝かと思いきや、オープンデータの分野は違うんですね(不勉強で恐縮です)。

EU オープンデータ成熟度2022

(press一部和訳)

本報告書は、35カ国が実施した自己評価調査に基づいています。EU27カ国だけでなく、欧州自由貿易連合(EFTA)3カ国(ノルウェー、スイス、アイスランド)、候補4カ国(アルバニアモンテネグロセルビアウクライナ)、ボスニア・ヘルツェゴビナも含まれています。

各国が回答する必要のある質問は、オープンデータ開発における以下の4つの主要な側面に関連しています。

  • 政策 - ヨーロッパ諸国で実施されているオープンデータ政策と戦略に光を当てます。
  • インパクト - オープンデータの再利用とそれによってもたらされるインパクトの両方を測定するための、ヨーロッパ諸国の意欲、準備、および能力を分析します。
  • ポータル - この側面は、各国のオープンデータポータルの機能、使用、持続可能性に焦点を当てています。
  • 質 - この側面では、国内のソースからメタデータを体系的に採取するために、ポータル管理者が採用した手段を検証します。

これらの次元に基づき各国は採点され、成熟度によって4つのグループに分類されます(トレンドセッター、ファストトラッカー、フォロワー、ビギナー)。これはさらなる発展を促し、これらの国々の各グループをターゲットとした勧告の提供を容易にするために特別に行われるものです。

全体として2022年のEU27か国におけるODMスコアの平均は79%でした。EU加盟国は、ポータルサイト(83%)と品質(77%)では昨年と同様の成果を上げているが、政策ではわずかに遅れ、インパクト分野では最大の減少(-7%)となっています。

 

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EU オープンデータ成熟度2022

総合順位において首位はフランス、次点にウクライナポーランドと続きます。

フランスが首位となった背景として、フランス首相が義務付けている内容が書いてありました。

  • 全省庁及び地方公共団体は、CDO(最高データ責任者)を置く
  • デジタル担当の各長官は、一般データ管理者としてCDOを調整する
  • 研究省は、データのアクセスを希望する研究者の要請を迅速に処理する憲章を制定する
  • 各省庁は、データとソースコードのエコシステムを活性化する。またそのために、オープンガバメントパートナーシップフォーラムに重点を置く
  • 各省庁は、データ、アルゴリズムソースコードの戦略について、行動と期限を定めたロードマップを設定する。またそこには各省庁の職員が持つこれらの分野のスキルも記載
  • オープンデータは、国のポータルサイトdata.gouv.frで参照されるようにする

 

このレポート結構面白いので、また後日追記しようと思います。

【EU】ドローン戦略を採択

欧州委員会(EC)が、ドローン戦略2.0(European Drone Strategy 2.0)を採択したようですね。

本戦略は、EUとして今後どのようにドローンを発展させていくか、またその為にどのような策を打っていくか等を取りまとめたものです。また以前公開した所謂「モビリティ戦略」(Sustainable and Smart Mobility Strategy)にて、2022年末までに最新のドローン戦略を作成することが明記されていたことを受けたものです。

(press一部和訳)

本戦略は、EUのドローン市場をさらに発展させるためのビジョンを示したものです。

EUにおいて、2023年1月にはドローンの交通管理システム「U-space」が導入される予定で、これにより運用拡大のための基盤が整うことになります。欧州委員会としては、このように画期的な技術を推進する前に社会実装に向けた課題(音、安全性、プライバシー等)に対処し、ドローンの活用が市民のニーズに沿った形で進められるように求めています。

本戦略では、2030年までに次の活用方法を想定しています:

  • 緊急用途(医薬品)等
  • エアタクシー※導入時はパイロットが搭乗するが、最終的には自動運転

上記の実現のためには、AIやロボティクス、半導体等の個々の技術についても深めていく必要があります。

その他にも運用面、技術面、費用面で必要となる19のアクションを開始する予定です(4つのカテゴリに分けたものが以下)。

  • 耐空性に関する共通規則の採用。遠隔操縦機とeVTOL(有人電動垂直離着陸機)のパイロットの新たな訓練要件の採用。
  • 持続可能なエアーモビリティを実現する地域のステークホルダ及び産業を支援するオンラインプラットフォームの作成への資金提供。
  • 戦略的ドローン技術ロードマップの作成。研究とイノベーションの優先分野を特定、既存の戦略への依存を減らし、新たな依存が生じることを回避
  • サイバーセキュリティの観点で適性なドローンの基準の定義

 

ちなみに日本でのドローンの動向としては、最近レベル4飛行が承認されたことはご存じかと思います(レベル4飛行のポータルサイトを発見しました)。

あと内閣府が「空の産業革命に向けたドローン2022」を公開していますね。

 

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【EU】デジタルリテラシーに関する教育時における、教育者向けのガイドラインを公開

欧州委員会(EC)が、デジタルリテラシーに関する教育時における、教育者向けのガイドラインを公開したようですね。教員のリテラシー教育ではなく、教員が教室で生徒に教える際のガイドラインということです。

この中には、専門的な概念の定義、授業での演習方法、健全なオンライン習慣の奨励方法等が含まれています。またコンテンツは、デジタルリテラシーの構築、偽情報への対処、デジタルリテラシーの評価と査定という3つの主要なトピックを扱っています。

現在ヨーロッパでは、13歳の生徒の3人に1人が基本的なデジタル技術を身につけておらず、OECDによると15歳の生徒の半数程度のみ情報の主観性や偏向性の見分け方を教わったと回答したそうです。そのため、メディアリテラシーだけでなくデジタルリテラシーに関する教育・訓練を強化する取組を開始したということです。

これは「子供のためのより良いインターネットのための欧州新戦略(BIK+)」のもと、また「デジタル教育行動計画(2021-2027年)」 「欧州民主化行動計画」の一部として進められているとのこと。

デジタルリテラシーに関する教育時における、教育者向けのガイドライン

例えば偽情報を確認する観点として「ファクトチェックとは何か?」「多角的に情報を理解するには?」「偽情報の倫理性」、また偽情報に出くわした際に何を確認すべきか等のコンテンツが盛り込まれています。

 

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